供給網がないことを理由に、脱炭素燃料の活用を諦めない。そのための新たな選択肢が、バイオ燃料Book & Claim取引所です。九州のSS(サービスステーション)で物理供給されたHVO(リニューアブルディーゼル)などのバイオ燃料から環境価値だけを切り離して証書化し、東京の物流会社など遠隔地の需要家がオンラインで購入できる環境価値証書の取引プラットフォームです。燃料そのものを輸送せずに脱炭素価値を移転できるため、EV・水素化が難しい長距離幹線輸送でも、将来のScope1削減やGX-ETS対応を見据えた選択肢を確保できます。
バイオ燃料は本来「地産地消型」の商品であり、供給できる地域や車両が限られます。本サービスは、物理燃料と環境価値の流通を分離することで地理的な制約を越え、供給が集まる地域と需要のある地域を結び付けます。バイオ燃料の環境価値取引所として、供給網に左右されにくい脱炭素の仕組みを実現します。
脱炭素の必要性は理解していても、バイオ燃料の物理的・制度的な制約によって、一歩を踏み出せない——そうした声を多くいただきます。企業や担当者の立場によって、課題は次のように異なります。
こうした課題の背景には、「燃料そのものを動かさなければ価値を届けられない」という物理的な制約があります。一方で、その制約を解消するための制度も整いつつあります。
国内では、経済産業省・資源エネルギー庁の「脱炭素燃料政策小委員会」において、次世代燃料の環境価値を物理燃料から完全に分離し、サプライチェーンを超えて移転できる「ブックアンドクレーム方式」と「属性取引」を組み合わせた「クリーン燃料証書」制度の創設が目指されています。2025年度に運営体制・規定類を準備し、2026年度に少量サンプルによる第1段階の実証、2026年末を目途に本格稼働の是非を検討、2027年度以降に取引活性化や海外イニシアティブ対応へ拡張する方針が示されています(出典:経済産業省・資源エネルギー庁 脱炭素燃料政策小委員会 資料7、2026年4月17日)。

2026年度はe-ガソリン、SAF、HVO、合成メタン・バイオガスを対象に証書制度の詳細設計と実証が進みます。なかでもHVOは複数パターンの検証体制が他燃料に先駆けて整い、既存の軽油商流にそのまま乗せやすいことから実証の優先燃料と位置付けられています(同資料)。本サービスは、この優先燃料であるHVOを主軸に据えています。
需要側の制度としては、GX-ETS(排出量取引制度)が2026年度に本格稼働します。対象はScope1(直接排出)のみで、Scope2(電気・熱)は含まれません。3年度平均で10万t-CO2以上の事業者が対象です。取引を支える「カーボン・クレジット市場」は2023年10月に東京証券取引所へ開設済みで、J-クレジットやGX-ETSの超過削減枠が取引されています。
ここで重要なのは、Scope1への計上に関する時制です。クリーン燃料証書制度が志向する「証書を用いたScope1排出量への充当」は、あくまで国内制度が目指す方向性であり、2026年時点では実証段階にあります(本格稼働の是非は2026年末を目途に判断)。国際基準のGHGプロトコルも改訂作業中で、証書・クレジットを用いたScope1・Scope3報告は、2026年時点では公式には認められておらず、改訂確定は2028年末以降の見込みです。
一方、SAF分野ではBook-and-Claim認証が既に実務で使われています。Microsoft社やDHL Express社がSAF購入証明(SAFc)でScope3をオフセットする事例があり、海運では商船三井が123Carbonのプラットフォームでデジタル環境属性証書(EAC)を発行し、顧客のScope3削減に活用した事例があります。本サービスは、こうした国内制度の本格稼働を見据え、いまのうちに調達・記録の体制を先行整備するためのプラットフォームです。
本サービスは、Book & Claim(ブックアンドクレーム)方式の考え方を、証書の発行・移転・償却までの実務機能に落とし込んでいます。設計の中心にあるのは、「燃料が届かない場所にも価値を届けること」と、「その価値が確かに一度だけ主張されること」の両立です。
| Pain(課題) | Solution(解決策) | Technical Enabler(技術的裏付け) |
|---|---|---|
| HVOの給油拠点が遠隔地になく物理調達できない | 環境価値を物理燃料から分離して証書化し、遠隔地の需要家へオンラインで移転 | 発行・移転・償却(リタイア)を記録する属性トラッキング台帳 |
| 同じ環境価値の二重計上が懸念される | 1証書=環境価値1単位としてシリアル管理し、償却済みは再流通不可に | 発行元から購入・償却までを結ぶ一意のトラッキングID |
| 将来のScope1充当など制度対応が不確実 | クリーン燃料証書制度の設計に沿った属性項目(燃料種別・原料・供給地・数量・GHG削減量等)を保持 | 制度が定める属性データ項目に準拠した証書フォーマット |
| 開示・監査への説明責任を果たしたい | 購入・償却の証跡をダウンロードし、開示・監査に提出できる形で保管 | タイムスタンプ付きの取引履歴と証書データの出力 |
物理供給の記録(Book)と環境価値の主張(Claim)を台帳上で明確に切り分けることで、遠隔地の需要家でも「誰が、どの燃料の、どれだけの環境価値を使ったか」を追跡できるようにします。

本サービスを導入するメリットは、大きく3つあります。第一に、物理供給網に縛られず、脱炭素価値を調達できることです。第二に、削減の裏付けを証書として保管し、開示・監査に提出できることです。第三に、供給側にとって、環境価値の遠隔販売という新たな収益源が生まれることです。これにより、供給が偏在するというバイオ燃料本来の弱点を、需要と供給のマッチングによって補うことができます。

物理供給網が届かない地域でも、遠隔地の環境価値をオンラインで調達できます。
購入・償却の証跡を出力し、開示・監査資料としてそのまま活用できます。
地元需要を超える環境価値を遠隔地へ販売し、インフラ投資の回収を早めます。
数値を入力すると概算が自動更新されます。実際の効果や証書価格・排出枠価格を保証するものではありません。
「回避が期待できる将来コスト」は、クリーン燃料証書制度の本格稼働や充当ルールの確定を前提とした見通しであり、確定した効果ではありません。実際の数値は御社の燃料使用量・証書単価・想定排出枠価格に置き換えてご確認ください。
導入は、現状把握から証跡の取得までを5つのステップで進めます。物理燃料の手配を伴わないため、供給網の整備を待たずに着手できる点が特徴です。
対象事業所の燃料使用量とScope1排出量を棚卸しし、証書で置き換える範囲を設定します。
取引所アカウントを開設し、事業者登録・本人確認を行います。
燃料種別(HVO等)・供給地・数量・GHG削減量などの属性で証書を検索・比較します。
オンラインで証書を購入・決済します。取引内容は台帳に記録されます。
自社の脱炭素価値として証書を償却し、開示・報告用の証跡を取得します。

従来、バイオ燃料の環境価値は、現物の調達や当事者間の相対取引に依存し、物理供給網が届く範囲でしか活用できませんでした。本サービスは、Book & Claim方式によって、調達範囲・取引効率・透明性・収益機会を構造的に改善します。
| 観点 | 従来手法(相対取引・現物調達のみ) | 本サービス(Book & Claim) |
|---|---|---|
| 環境価値の調達範囲 | 物理供給網が届く地域に限定 | 遠隔地の環境価値を全国から調達可能 |
| 取引の手間 | 個別の相対交渉・都度契約 | オンラインで検索・購入・償却まで完結 |
| 二重計上の防止 | 当事者間の確認に依存 | シリアル管理・償却記録で防止 |
| 透明性・証跡 | 契約ベースで属性が不透明になりがち | 属性データと取引履歴を記録・出力 |
| 供給側の収益機会 | 地元での燃料販売に限定 | 環境価値を遠隔地へ販売する新収益源 |
| 制度対応 | 個社ごとの対応 | クリーン燃料証書制度の設計に沿って先行整備 |

以下は想定される活用シーンであり、特定の導入実績を示すものではありません。国内では出光興産のリニューアブルディーゼル(IRD)が2024年12月から全国販売されています。現状は建設機械や軌道車等のオフロードでの利用が中心で、供給拠点の整備には地域差があります。また、2026年夏には、出光興産・T2・いすゞ自動車が、神奈川〜兵庫間の自動運転トラック商用運行でIRDを試験利用する実証を開始し、軽油との価格差が普及の課題とされています。こうした業界動向を前提に、Book & Claimの活用余地を描きます。
九州で供給されたHVOの環境価値証書を、東京の長距離輸送会社がオンラインで購入します。幹線輸送における脱炭素の裏付けとして開示に活用し、将来のScope1充当ルールの確定を見据えて先行的に取り組みます。
地方でHVO供給インフラを整備した元売り系列のSSが、地元需要を超える環境価値を遠隔地の需要家へ販売します。インフラ投資の回収を早め、価格差のハードルを収益面から緩和します。
GX-ETS対象事業者が、排出枠取引と証書調達を組み合わせてコストを最適化します。荷主・投資家向けの開示に、追加的な脱炭素の裏付けを用意します。
Book & Claim方式が信頼されるための最大の要件は、同じ環境価値が二重に主張されないことです。本サービスでは1証書を一意のシリアルで管理し、需要家が「償却(リタイア)」した証書は再流通できない仕組みを前提としています。発行(SS・供給事業者での物理供給)から購入・償却までを一連の台帳で追跡することで、誰がどの環境価値を主張したのかを明確にします。
燃料種別・原料・供給地・数量・GHG削減量等の属性データを証書に保持し、取引履歴をタイムスタンプ付きで出力できます。
これらは環境属性証書に一般に求められる要件を整理したものです。実際の運用は、クリーン燃料証書制度で定められる規定に沿って更新していきます。
燃料などの物理的な商品と、その環境価値(環境属性)を分離し、環境価値だけを証書として別々に取引する方式です。物理供給を「Book(記帳)」し、遠隔地の需要家がその価値を「Claim(主張)」できます。SAF分野など、海外では既に実務で使われています。
国内のクリーン燃料証書制度は将来的なScope1充当を志向していますが、2026年時点では実証段階であり、本格稼働の是非は2026年末を目途に検討中です。GHGプロトコルでも、証書を用いたScope1・Scope3報告は2026年時点で公式には認められていません(改訂確定は2028年末以降の見込み)。そのため、現時点では「制度化を見据えた先行的な取り組み」として活用いただく位置付けです。
証書の価格は、燃料種別・供給地・数量・GHG削減量などの属性や、市場の需給によって変動します。「対象排出量[t-CO2] × 証書単価[円/t-CO2]」で概算できます。導入メリットのセクションにある試算例をご参照ください。
本サービスは、経済産業省・資源エネルギー庁の脱炭素燃料政策小委員会で創設が目指されているクリーン燃料証書制度の設計方針(Book & Claim方式・属性取引)に沿って、属性項目や台帳管理を先行整備するプラットフォームです。制度の本格稼働に合わせて対応を更新していきます。
HVOは、2026年度の証書制度で環境価値の分離が可能と判断された対象燃料です。複数の移転パターンの検証体制が他燃料に先駆けて整い、既存の軽油商流にそのまま乗せやすいことから、実証の優先燃料と位置付けられているためです。
従来の相対取引は、物理供給網が届く範囲や当事者間の確認に依存し、属性が不透明になりがちでした。本サービスは、オンラインで検索・購入・償却まで完結します。シリアル管理によって二重計上を防ぎ、属性データと取引履歴を証跡として出力できます。
1証書を一意のシリアルで管理し、償却済みの証書は再流通できない仕組みを前提としています。発行から償却までを台帳で追跡することで、同じ環境価値が二重に主張されることを防ぎます。
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